中小企業の海外進出での課題と解決策とは?

中小企業が海外進出で勝つためのポイントや、部署別の課題と解決策、事例から学んで実践できるノウハウを解説しています。

Posted By Tatsuro Namikawa

日本国内のマーケットだけで事業展開していても今後生き延びられるのだろうか?
このような懸念をお持ちの方は多いのではないでしょうか。
多くの日本企業が国内市場だけでは販路の限界を感じ、海外市場への進出を視野に入れてきている今、日本企業の大航海時代に突入していると言えるのではないでしょうか。
そんな中、大企業だけでなく数々の中小企業も海外進出することを重視してきています。

デジタル技術が発展しSNSを通じて世界中の誰もが情報発信源となり、蔓延する新型コロナウイルス感染が後押しをするように、買い物やコミュニケーション方法、ワークスタイルさえもオンライン化が進みました。
世界へ発信して世界と繋がり世界で活躍するグローバル展開が、今後もさらに進行していくでしょう。

しかしその反面、不安定な世界情勢、物価の高騰化、コロナ禍の影響など、海外へ進出することへの不安やリスクにも目を瞑れない状況下で、中小企業は、限られた人材、資金や資源を元に海外進出することになるので、より一層慎重に警戒して悩んでいる担当者の方も多いと思います。

今回は、中小企業が海外進出する上で、各部署別にどのような課題があり何を準備していく必要があるのかを解説し、最後には参考になる実例を合わせて実践できる方法も紹介していきます。

目次

  1. 今!中小企業が海外進出を検討するようになった背景とは?
  2. 失敗しない海外進出!中小企業が勝つための部署別の課題と成功の6つのポイント
  3. 中小企業だからこそできる海外進出術!事例から学ぶ実践の方法
  4. まとめ


今!中小企業が海外進出を検討するようになった背景とは?

経済成長する新興国へ海外進出する中小企業

萎んでいく国内市場からの脱却

日本国内での消費が減少している中、中小企業は国内市場の脱却策として海外進出が注目されています。
国内家計最終消費支出は、2017年では295兆円から2040年には273兆円になると推測されています。
その背景として、少子高齢化が大きな要因となっており、それによって労働人口が減少すると今後の経済成長は需要と供給ともにマイナスへと転じ全体的な消費量が減少すると指摘されています。
国内消費の減少により、売上低下での企業活動の影響や国内企業の成長期待が懸念され国際競争力が弱まり、投資先としての魅力も落ちていく可能性があります。

国内市場消費の減少要因は、高齢化だけでなく、新型コロナウイルス感染や物価高も影響していると言われています。
Bloombergは11月15日に、「2022年7ー9月期の実質国内総生産(GDP)速報値は前期比年率1.2%減少した。市場予想の1.2%増に反して4四半期ぶりのマイナス成長となった。新型コロナウイルス感染「第7波」や物価高の影響を受けて個人消費が鈍化。」と発表しました。

国内の消費が収縮すると、国内市場の取り合い合戦が激化し値下げや利益率を下げるなどのような経営戦略や事業革新が強いられるため、中小企業は、海外進出を視野に入れた事業展開は、今やトレンドではなく必須要素のレベルまで到達しているのではないでしょうか。

新興国の経済発展による市場規模の拡大

日本の中小企業が参入する進出先として、インドネシアやベトナムのような発展途上諸国の中でも経済成長率が高い新興国や、BRICs、VISTA、ネクスト11にような新興成長国グループもさらに期待されてきています。
例えば、IMFの実質GDP成長率(下図)にも示されているように、2022年度、日本、米国などは0〜3%、成長率6%以上は、インド、カンボジア、コンゴ民主共和国、コロンビア、ベネズエラなどの新興国です。

新興国が注目されている要因として、生産年齢人口が増加していること新興国の多くが資源国であることが挙げられます。
PwCの調査レポート「2050年の世界」によると、「先進国から新興国への経済力シフトは長期にわたり継続‐インド、インドネシア、ベトナムが著しく成長」と発表しているように、世界経済力は35年に渡って次第にシフトしています。
このように、日本の中小企業が参入する進出先としても新興国への関心と期待が高まっていくでしょう。

中小企業が海外進出する新興国の実質GDP成長率

*IMFによる実質GDP成長率

デジタル技術とインフラ整備の進展

近年、5Gやロボット、AIのようなデジタル技術や、スーパーコンピューター、IoTといったインフラ整備が充実してきたことで、日本からでも海外への情報発信や商品発送ができるようになりました。
FacebookやInstagramといったSNSを個人のみが利用するのではなく、企業も積極的に取り入れ、デジタル技術を駆使した販売、コミュニケーションチャネルを持つデジタルマーケティングが盛んになっています。
また、コロナによる消費者行動も変化し、外出してお店で商品を購入する手段から、いつでもどこからでもショッピングできるEコマース(オンラインストア)での購買も増えています。2021年の国内BtoC-EC市場規模における3分野合計(物販、サービス分野、デジタル分野)は20兆6,950 億円で、前年比11.3%も増加しています(参照:経済産業省出典「国内電子商取引市場規模(BtoC及びBtoB)」)。

このように、デジタル技術に伴うインフラ整備が充実してきたことで、実店舗を持たず、デジタルプラットフォームで事業展開し易くなったため、海外ユーザーへ向けた自社の商品やサービスを販売する営業活動として、デジタルマーケティングを行う企業が増加しています。

失敗しない海外進出!中小企業が勝つための部署別の課題と成功の6つのポイント

海外進出先で働く中小企業の従業員

海外進出する際、今までとは異なる様々な壁や問題が立ちはだかります。
ここでは、中小企業が必ず把握しておきたい課題と解決策を部署別に解説していきます。

営業部門:販路となる提携先や流通経路を確保する

企業が海外への販路拡大で新規顧客との接点が増えることでの「売上拡大」と、既存販路を見直し、最も効果的なマーケットで施策を打てるようになることでの「コスト最適化」が見込めます。

既存販路のみで販売を維持するだけでは、売上の成長率はいずれ鈍化していくと考えられるので、十分な顧客の量を確保できる販路が少ないと頭を抱える中小企業にとって、新たな販路を開拓し拡大させていきたいところです。
しかし、中小企業が熟知していない進出国で販売先を確保することだけでも困難な課題の一つといえます。実際、海外進出に失敗するケースとして、多くのリスクや手間や時間が発生する上、販売先が確保できないと自社の商品やサービスを現地で販売できないこともあります。

適切に販路を確保して拡大していくために、中小企業に向けた国や地方自治体の支援策を活用していくのが良いでしょう。
例えば、JETROや中小機構による海外展開や新事業展開などがありますので調べてみることをおすすめします。
なんと言っても、専門家から貿易や輸出に関してもアドバイスがもらえるのは非常に心強いです。

管理本部:海外進出向けの補助金制度や資金調達支援の活用を検討する

中小企業にとって、海外進出への必要資金の確保は重要課題の1つであり資金調達を計画的に行う必要があります。
進出後、ある程度の余剰資金を確保することで、環境の変化による売上低迷や為替変動などの不測の事態やトラブルに備えて対応できるからです。

海外ビジネスの形態は、「輸出入貿易」と「海外現地進出」の主に2つに分けられ、それぞれ計画している形態によって「予算の立て方」は異なります。
また、海外進出の独特な費用として、現地進出前の現地調査費用やグローバル人材の採用コスト、進出後では、駐在員事務所や支店の設備投資費用、現地パートナー&現地コンサルティング費用が必要になることが多いのも注意です。

そこで、都道府県、市区町村など各自治体、大手企業、政府系金融機関、各種財団などから金銭的な支援を受けることができる制度を活用するのも1つの方法です。
新規事業の設備投資や会社設立費用や、事業拡大など事業の創設と発展を目的とした活動に対しての助成金があります。ビジネスの形態に合った制度を活用し資金調達をすることも検討してみましょう。

人事(HR)部門:グローバル人材の確保と育成は長期目線で考える

海外進出に欠かせない要素として、言語、文化、価値観の違いを理解し、多国籍の人々と円滑なビジネスコミュニケーションを図ることができるグローバル人材が挙げられます。
海外進出国では、その土地で話される言語を話し広い知識と深い専門性をもって柔軟に適応することが問われるため、グローバル人材の確保ができないと致命的だといえます。
その上で、グローバル人材を含め海外進出の全体計画を策定していくことになります。

グローバル人材を確保するだけではなく、長期的なグローバル人材育成の環境づくりを考えた取り組みをしていくことも重要です。どんなポストで活躍したいのか、希望しているキャリアパスやポジション、海外拠点に常駐することを想定しているかなど各人材のキャリアプランと自社としてのビジョンをすり合わせ、グローバル人材が、語学力だけに限らず、総合的に能力を発揮できるようにすることが肝心です。

グローバル人材の育成において、経済産業省が推奨している外国人留学生の採用や、社内で手軽に進めやすい外部研修やe-ラーニングの活用、現地で様々な経験を積むことができる海外研修や留学の推進なども検討してみるのも良いでしょう。

企画部門:事前のマーケットリサーチとカントリーリスクのマネジメントをする

外進出する前には、進出国の文化や宗教、生活様式や正しい法律などを理解、進出先のマーケットの動向や顧客の潜在ニーズを把握する必要があります。
他にも現地市場や進出国特有の政治、経済、社会の変化でもたらされるカントリーリスクを調査し、リスクマネジメントを行うなどへの準備を進めることが成功への鍵を握ります。

マーケティング調査を実施する理由は、それぞれの国で話す言語、生活様式や日々の習慣、宗教の信仰や文化が違うため、利益を生んでいた国内でのヒット商品やサービスが、決して海外マーケットで通用するとは限らないからです。
実際に、私たちとは全く異なる方法で商品を使用されることもありますし、日本と現地の顧客では異なる意外なニーズがある場合もあります。
例えば、高品質で手厚いアフターサービスが期待でき、多少価格が高い商品が日本の顧客にとっては人気だったとしても、アフターサービスが手厚くなくても、品質が多少低く廉価な製品の方が良いと考えている現地の顧客もいます。

治安や政治が安定しない新興国ではカントリーリスクは高まる傾向があるので、カントリーリスクを調査しリスクマネジメントを事前に検討していきましょう。
具体的に、新興国では社会情勢が不安定なこともあり、国の状況や世界の経済状況によって為替相場が大きく動くこともあるので海外との取引において為替リスクには注意が必要です。
例えば、円と米ドルが10円変動した時の例(下図)のように、日本円に対する為替レートが急激に変動すると、現地通貨の価値が下がり商品を同じ価格で売ったとしても日本円では利益が出なくなる、もしくは最悪の場合利益を被ることもあります。
反対に、為替変動の影響によって急激な売上増となると税金額も増大する危険性もあります。

もし進出国のマーケットとカントリーリスクを​​十分に認識しなかった場合、予想以上にコストがかかり資金不足が生じ、結果的に資金回収が難しくなってしまうという最悪のシナリオもあるので、入念な事前確認をおすすめします。
その上で、商品やサービスの販売方法やプロモーションの施策などに活用するかを戦略に落とし込んでいくと良いでしょう。


中小企業が海外進出した際の外国為替のリスク

*円と米ドルが10円変動した時の例

とはいえ、自社だけで海外進出するケースはごく稀で、パートナー企業との協力を得るのが得策です。
カントリーリスクマネジメントとして、OECD(経済協力開発機構)R&Iが発表しているカントリーリスクの格付け情報なども公開しているので確認しておきましょう。
それ以外にも全額政府出資の日本貿易保険(NEXI)や民間の保険会社が扱う保険もあります。

総務部門:必要な販売許可や書類を準備する

新興国などの海外で工場、事務所、店舗などの拠点を設ける際は、外国の法律に基づいて、営業許可、会計処理などを行うことになる場合もあります。
例えば、医薬品は原則として、医薬品等の品目ごとに販売承認や届出が必要です。品目ごとに都道府県知事又は厚生労働大臣が行い、膨大な時間や費用、治験データの書類が必要となります。
自社で進出国の法律を正しく理解し、各種書類を準備していくとなると不安があると思いますので、専門機関に相談してみましょう。

マーケティグ部門:デジタルマーケティングを活用してローカライゼーション(海外誘致)

商品やサービスを、進出先の文化や生活習慣に馴染ませ現地のユーザーに受け入れられるようにする「ローカライゼーション」は、海外進出にとって必須の要素です。
国内で実施し成功した施策や情報発信を同じように行っても進出国では通用しない場合もあります。

マーケットリサーチで集積できたデータを基に、様々なステージでローカライゼーションしていくことが重要です。
具体的に、ユーザーは母国語で商品やサービスの情報をチェックし自国にいながらも商品を購入したいというニーズがあった場合、現地向けウェブサイトを開設したり、現地向けに商品の使い方を解説するコンテンツを作成します。
このようにWebサイトやWebサービス、Web広告を利用したオンラインで集客し、商品やサービスを認知させ購入してもらうための仕組みづくりや運用手段、戦略を実践していくことで、現地で受け入れられやすい事業展開をしていくことができます。

また、今ではデジタルマーケティングを通じて日本に居ながら世界への発信し商品やサービスを認知させることも可能です。
InstagramやTwitterのような「SNS」を用いた広告やアカウント運用をしたり、進出国の言語でのGoogleやYahoo!といった「検索エンジン」での最適化(SEO)やEコマース(オンラインストア)の開設や、Amazonや進出国での国内ショッピングモールサイトでの新たな販路拡大をして集客と販売に繋げていくこともできます。
しかし、現地の顧客ニーズを把握するマーケット調査にもデジタルマーケティングにも、進出国を理解に精通し現地の言語に巧みなグローバル人材が必要になるため、ローカライゼーションを専門としてクリエイティブなマーケティングができる専門会社に相談するのが良いでしょう。

ハンブルバニーは外国に許点を置くグローバル企業に対し日本市場へ商品やサービスを認知や興味を持たせるマーケティング施策を実施したり、海外進出を目指す日本の企業が進出先でグローバルな人材によるデジタルマーケティングを行っています。
具体的には、Webサイトデザインから、SEO対策、Web広告や、SNSマーケティングなどを通じて様々なグローバルブランドのローカライズの実績があります。詳しくはハンブルバニーの海外マーケティングの実績をご覧ください。

番外編:SDGsな経済×グローバルな活動でブランドイメージの向上

企業経営における「社会的価値」の重要性が高まっており、SDGsやソーシャルグッドの取り組みが盛んになっているため、中小企業が海外に進出することで、自社の企業価値やブランドイメージの向上に繋がるチャンスがあります。
先進国である日本の企業が、発展途上国でビジネス展開することで、地域や地域住民への貢献へと繋がるというケースが増えてきています。
例えば、スターバックスがブラジル農園でコーヒー豆を栽培することで、その地域の雇用を創出したり、また地域住民の生活を支える教育、医療までも支えています。
このようにして、企業の社会貢献自社商品やサービスの認知を拡大できるだけでなく、進出国そして地域と繋がり、経済の潤滑油となり、SDGsに紐づく社会課題の達成をすることができる可能性もあります。
さらに、国内でも企業のブランド価値も向上し、国内市場の販路拡大や売上増加にも相乗効果をもたらしている事例も多くあります。

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中小企業だからこそできる海外進出術!事例から学ぶ実践の方法

海外進出した中小企業の本社メンバーと現地スタッフ

【JETROからの支援を活用】流通部門:インドネシアと台湾に販路を拡大した医療機器販売メーカー

茨城県で自動車計器用精密部品や歯科用医療機器類の製造販売をする会社Sは、オンラインで数々の海外展開の支援実績がある JETROの海外事務所と繋がれ、新興国である台湾とインドネシアに販路を拡大しました。
医療機器調達に関しては、医療機器の品質マネジ メントシステム規格「ISO13485」の取得が義務付けられており、経験豊富な専門家による的確なアドバイスをもとに進め取得できたことも、海外進出の要であると語られていました。(参照:JETRO 海外展開支援活用事例集 p.13

【ハンブルバニーからの支援を活用】マーケティング部門:訪日外国人観光客を集客したAPA HOTELS の英語版ウェブサイト

海外を許点にするブランドやサービスのローカライズやデジタルマーケティングを実施する、東京都にオフィスを構えるグローバルデジタルマーケティング企業のハンブルバニーは、インバウンド需要の拡大に伴い、日本で急増し続けている訪日外国人観光客を集客するため、APA HOTELSの英語版ホームページをリニューアルを手がけました。
アパホテルのデータベースと統合し、サイトのリニューアルする必要がありました。
アパホテルを選んでもらうためには、ただ日本語の元サイトを翻訳するだけではなく、ローカライゼーションするためには、特別な工夫が必要でした。
例えば、日本の地理に不慣れな外国人も目的地のホテルを探しやすいように設計したり、ホテルの信頼度を高められるように第三者のレビューも閲覧できるレイアウトにしたりしました。

まとめ

今回は、中小企業が海外進出する課題とそれに対する解決策について解説しました。
海外進出の課題とはどのようなものか、また、課題の認識の重要性と対策の必要性がおわかりいただけたでしょうか。
海外進出には販路確保、人材確保をはじめ、マーケットリサーチなど、専門的な分野が多いと感じられた方も多いと思います。
正しく準備し、適切に対応することで、海外進出を成功に導いていきましょう。

ハンブルバニーは、海外進出に関する様々なご質問やご相談を承っています。

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