「サイトが検索結果で上位表示されているけど、ブランド認知に繋がっていない」
「メディアに掲載されたけど、商品の売り上げには効果がなかった」
企業のマーケティング担当者なら直面したことのあるSEOやPRの課題。
Google検索結果の上位にサイトを表示させ、デジタル集客に繋げるSEOとトレンド視点のコンテンツで戦略的にニュースを作り出すPR。これらはマーケティング手法の代表例として長年使われ、今もなお進化し続けています。デジタル化が加速したことで、データの可視化が当たり前となり、KPIという”結果”がより明確に求められる時代となりました。最近では、SEOとPRの手法を掛け合わせ、相乗効果を生み出し、お互いの課題を補い合うケースも見られるようになっています。遠いようで実は近い存在だったSEOとPR。双方の本質的な特徴を見極め、デジタル化という現代の仕組みに落とし込むことで生まれる、SEOとPRの相乗効果と活用ポイントについて解説いたします。
目次
- SEO・PRとは?〜効果と課題〜
- SEOとPRの相乗効果
- 相乗効果をもたらす3つのSEO・PR活用ポイントとは?
- SEO・PR戦略の効果測定と分析
- SEOとPRそれぞれの効果を最大化させる関係づくりが大切
SEO・PRとは?〜効果と課題〜
急速なデジタル化により、実店舗を持たないデジタルネイティブなブランドの増加や、ECサイトの普及率が高まり、オンラインで集客できるデジタルマーケティング施策に注目が集まっています。
SEO(検索エンジン最適化 / Search Engine Optimization)は、ユーザーのニーズ・検索意図に沿ったコンテンツでGoogle検索結果の上位に表示させ、デジタル集客を図る手法が一般的で、情報収集プロセスをうまく分析することでコンバージョンや認知拡大等の効果に繋げることが可能です。
SEO施策では、時期や流行に左右されないエバーグリーンという考え方を主軸にしたSEOカテゴリー・キーワードを戦略立案し、コンテンツを作成するまでが一連の流れとなります。最近では、PR視点を用いたトレンドSEOという考え方に関心が高まっています。効果が得られるまでに時間を要するエバーグリーンは、長期的かつ持続的でありますが、短期的な効果のあるトレンド要素を取り入れにくく、集客の機会を逃してしまうという課題もあります。
SEOの最新トレンドと変化
ユーザーの検索意図・トレンドがSEO効果に与える影響は大きく、特に2020年は新型コロナウイルス感染拡大で、それを実証した年でもありました。人々の基本的な考え方に変化があったことが2020年のGoogleトレンドインサイトでも述べられており、Googleアルゴリズムは、今まで以上にユーザー需要に沿った検索結果へとアップデートされたことが明らかになりました。
例えば、「ポッドキャスト」の検索推移が2019年と比べ57%も増加していることから、”ながら聴き”のコンテンツに対する需要が高まっている傾向が読み取れます。その他「ラジオ」や「音声アプリ」の検索需要の高まりから、テレビ、PCなどの画面を見ずにコンテンツが楽しめる”音”の価値が再認識されていることが推測できます。トレンドに影響されないエバーグリーンなSEO戦略は今後も欠かせない考え方ですが、それに加えてトレンド視点を持った戦略立案が並行して必要となることは明白でしょう。

「ポッドキャスト」検索動向
共感を生むストーリーで認知を高めるPR
不明確で予測できないVUCA時代だからこそ、人々の共感を得るストーリーを含むPRコンテンツが注目されています。企業やブランドの特徴や強みと、世の中の関心や問題と重なり合う部分を見つけ出し、ストーリーを構築するPR戦略が、メディア露出やSNSによる認知拡大に繋がります。PRのアプローチとして、プレスリリースによるメディア露出、SNS、メールマガジン、オウンドメディア、PRイベントなど様々な手法が挙げられます。オフラインのアプローチが主流だった従来のPRから、デジタルシフトによってオンライン手法の優先度が高まっていることは確かで、PR会社や企業のPR担当者は、時代への適応と明確なデジタルPR戦略を求められています。
PRの最新トレンドと変化
デジタルPRというキーワードが頻繁に使われるようになった大きな要因として、人々が情報収集のために触れるメディアがデジタル化したことが挙げられます。
最新メディア定点調査のメディア総接触時間の時系列推移(1日あたり・週平均):東京地区では、2020年のメディア総接触時間は411.7分となり、昨年に比べ0.1分増加で推移しています。その中で「パソコン」「タブレット端末」「携帯電話/スマートフォン」のデジタルメディアが占める割合は51.6%で過半数となり、人々の生活がデジタルへシフトしていることが顕著に現れています。また、テレビや新聞などのマスメディアによる情報とは違いSNSプラットフォームで自分の興味・関心にカスタマイズされた情報が求められる傾向にある中で、従来のPR手法ではカバーし切れなくなっているのが現状です。これらの課題を解決するためにSEO視点を取り入れたデジタルPR戦略は必須であり、双方の特徴を理解し、活用していくことが重要なポイントとなります。

メディア総接触時間の時系列推移(1日あたり・週平均):東京地区
SEOとPRの相乗効果
SEO・PR視点を用いたコンテンツ戦略で対前年+55%のトラフィックを獲得
SEOにおけるPR視点の戦略立案が重要であることは前述しましたが、では、実際にどのような活用方法や効果があるのでしょうか?BtoBの不動産業界の事例を用いて解説いたします。
事業用不動産サービスを提供するA社は、デジタル集客を狙ったエバーグリーン視点のSEO対策を行っていました。そんな中、新型コロナウイルス感染拡大によるユーザー検索傾向に変化が見られ始め、2020年4月にはオーガニックトラフィックが激減するという異常な傾向が現れました。調査分析の結果、不動産関連に興味・関心のあるユーザーの検索意図が変化していることが分かりました。そしてGoogle Search Consoleのデータよりコロナに関するクエリが急増していることが判明したのです。

A社のウェブサイトのオーガニックトラフィック推移(2020年4月)
この異常事態に対応するため、“コロナ”というトレンド要素を含んだキーワードを既存のSEO戦略に組み込み、時期や流行に左右されない価値を提供するエバーグリーンコンテンツとタイムリーな価値を提供するトレンドコンテンツを同時に走らせ、結果として対2019年+55.1%のオーガニックユーザーの獲得に繋がりました。
成果に繋がったポイントとして、既存のSEO戦略へPR視点を取り入れ、ニュース性のあるトピックを”架け橋”としたコンテンツを並行して作成したことがトラフィック獲得に結びついたことが挙げられます。様々な検索意図を持つ幅広いユーザー層を取り込めるSEO・PRの考え方は、今後さらに加速するデジタル時代には欠かせない戦略の一つになってくるでしょう。
SEO要素を取り入れたプレスリリースで得られる被リンク効果
SEO視点を取り入れたPR活動で得られる効果として、プレスリリース配信による被リンク獲得が挙げられます。一般的にメディア露出による被リンクは、nofollowタグのため効果はない。と考えられていますが、2019年にGoogleが「nofollow属性の被リンクも評価をする際のヒントとして扱う」という内容を発表しており、プレスリリースメディアからの被リンクや、他のメディア露出により獲得した被リンクも、少なからずSEO効果はある、ということが判断できます。また、Googleが2019年に発表したガイドラインでE-A-Tの観点から、複数のデジタルメディアやSNSプラットフォーム上で企業名やサービス・商品名、ブランド名に言及してもらうと、Google検索結果に良い影響を与えます。これは、知名度のあるドメイン=信頼性が高いと判断されるからです。
二つ目に、ターゲットキーワードによるプレスリリース最適化から得られるSEO効果です。既存のSEO戦略を活用し、キーワードをプレスリリースのタイトルや本文へ含めることで、他メディアからのSEOターゲットキーワードを含んだ被リンク獲得に繋がり、SEO効果としてGoogle検索結果順位に寄与すると考えられます。
もちろんPRはユーザーが共感してシェアしたくなるようなコンテンツを発信することが重要ですが、デジタルプラットフォームの仕組みを活かした手法により、フィールドを超えた相乗効果を得ることができます。事例として、事業用不動産サービスを提供するA社が2019年に掲載した”ホテル”関連トピックの記事が2年後の2021年の3月末に急激なオーガニックトラフィックを獲得しました。前月比で+1,031%のオーガニックセッションとなった要因を分析してみると、同じタイミングで、企業PRのための”ホテル”関連のプレスリリースをA社が発信していたことが判明しました。このことから、プレスリリース等による企業側の発信により、Googleが関連トピックの権威性を多角的に判断し、サイトから掲載されているコンテンツのランクを引き上げたSEOとPRの相乗効果と考えられます。違った視点からの戦略を巧みに活用することで、さらなる成果に繋げてみてはいかがでしょうか?

SEO・PRの相乗効果のあった記事のオーガニックトラフィック推移
相乗効果をもたらす3つのSEO・PR活用ポイントとは?

SEO・PR活用ポイントイメージ
SEO・PRそれぞれの要素を用いて相乗効果を生み出すことについて説明しましたが、それでは今後、どのようなポイントを意識することが大事なのでしょうか?
リンクを意識した自社サイトからの情報発信
まず一つ目に挙げられるのが、リンクを意識した自社サイトからの情報発信です。
プレスリリースメディアの情報配信やSNSを利用したコミュニケーションは認知拡大にも繋がりますが、自社サイトへ紐付かなければ、様々なSEO効果のチャンスを逃してしまいます。主要なコンテンツは自社サイトへ掲載し、その情報を得るためにユーザーがサイト訪問するような設計があれば、トラフィック流入だけでなく、ドメイン評価にも直結します。また、PR活動の際に、記事掲載してくれるメディアへ自社リンクの設置をお願いすることによる被リンク獲得など、リンク、自社サイトの重要性を意識することで得られる効果は倍増します。
メディア・一般・企業に向けたコンテンツを発信
二つ目は、メディア・一般・企業に向けたコンテンツを発信することです。
PR活動では、メディア向けのプレスリリースを配信することに重きを置いてしまいがちですが、一般の方々に向けたコンテンツや、BtoBであれば企業向けの情報を発信するなど、ターゲットを変えたコンテンツを届けることがSEO・PRの相乗効果を生み出すための欠かせないポイントとなります。例えば、メディア向けに配信した調査データのプレスリリースを、一般の方々へ向けた解説コンテンツとして編集し直し、自社サイトで発信したところGoogle検索結果で上位表示されたというケースをよく耳にします。誰に届ける情報なのかを考え、発信していくことが相乗効果の最大化に繋がるでしょう。
エバーグリーンとトレンド視点のキーワードの活用
三つ目は、長期的な視点のエバーグリーンと短期的な視点のトレンドのキーワードをコンテンツやプレスリリースへ活用することです。ユーザーの検索意図はGoogle検索結果の判断基準に大きく影響します。時期や流行に左右されない情報を求める検索意図やタイムリーな情報を求める検索意図を意識をし、活用していくことで、様々な検索意図を持つ幅広いユーザー層の獲得に寄与します。
SEO・PR戦略の効果測定と分析
Google Search Consoleから導くSEO・PR戦略の効果
Google Search Consoleは、自社サイトのクエリ(サイト流入に繋がったキーワード)の確認で、SEO・PR活用ポイントを用いたプレスリリース配信により関連するキーワードやトピックでの検索量がどのように変化したのかなど、設定したKPIに基づき効果を測定することができます。また、クエリから新しいトピックを見つけ出し、新規ユーザー獲得に繋がるコンテンツを発信するなど、Google Search Consoleは使い方次第で様々な機会を見つけ出すことが可能です。
Google Analyticsのトラフィック推移データから相乗効果を測定
Google Analyticsは、自社サイトへのトラフィックデータの流入元や滞在時間の短いページを見つけて最適化させるなど、様々な用途に役立つツールです。PR要素を取り入れたSEOコンテンツへのトラフィック流入数やエンゲージメントを分析し、SEO・PR戦略の成果を確認できます。その他、Google Search ConsoleをGoogle Analyticsへ統合させることで、クエリから非ブランドキーワードを抽出し、SEO・PR戦略の実行の前後での検索数の割合を導き出し、ブランドを知らない人への認知拡大の効果を分析することもできます。
特にPRでは、データによる効果測定が難しいとされてきましたが、SEO要素を取り入れることで、可視化されたデータによる成果を検証することが今後求めれるようになるでしょう。