近年、グローバル化が進む中で、多くの企業が自社の製品やサービスを海外市場に展開しようとしています。その一環として注目されているのが「海外SEO」です。その主な理由は、海外SEOを通じて、自社のWebサイトを上位に表示させることで、外国の検索ユーザーに見つけてもらいやすくなり、国内からでも海外市場でビジネスの成果を上げる機会を増やせるからです。ただし、これには各国や地域における言語や文化、そして検索エンジンなどの違いから、日本向けSEOとは異なる対策が必要となります。
本記事では、海外SEOの基本知識から、海外市場の中でも特に人気の高いアメリカ市場に焦点を当て、日本向けSEOとアメリカ向けSEOの違い、そしてアメリカ向けSEOで成功するための秘訣まで、分かりやすく解説していきます。アメリカ市場でのビジネス展開に向けて、SEOの実施を検討されている企業の方々は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
海外向けのSEO対策の基本的な内容や成功のポイントを知りたい方はこちらの記事もあわせてご覧ください。
海外SEOとは
海外SEOとは、国外の検索ユーザー向けにWebサイトを最適化する取り組みのことを指します。多言語SEOとも呼ばれ、他の国や地域の言語に翻訳したコンテンツを、検索エンジンに認識させることで、海外のユーザーにアクセスを促し、Webサイトのアクセス数を増やすことを目的としています。そのため、主に海外でのビジネス展開を目指す企業が、自社のWebサイトに対して行う戦略であり、海外のターゲットユーザーを取り込むことで、売上の拡大や企業の成長に大いに貢献できると期待されています。
海外SEOの重要性
現代のデジタル時代において、ビジネスの領域は国境を越え、国際市場への展開がますます一般的になっています。日本でも海外におけるビジネス展開に興味を持つ企業が多く、ジェトロが毎年実施する「日本企業の海外展開に関するアンケート調査」の2022年度版では、現在ECを利用または検討していると回答した1,659社のうち、7割弱の企業が海外向け販売でECを活用または検討していると回答しました。
この主な背景には、日本国内の市場が縮小傾向にあることが挙げられます。日本は少子高齢化の進行が著しく、高齢者の割合が増えるにつれ、若年層の消費力も低下しつつあり、国内市場の競争はますます激しさを増しています。そのため、この課題を解決するためにも、新たな市場への展開が必要となり、その中でも滞在顧客が極めて多く存在すると言われている海外にビジネスを展開する企業が増えているのです。
しかし、海外市場での競争も激化しており、競合他社に打ち勝つためにも、自社のオンラインプレゼンスを高める必要があります。そこで役立つのが「海外SEO」です。日本国内の市場と海外の市場とでは、言語はもちろんのこと、文化や消費行動も異なります。そのため、単に海外向けのWebサイトやECサイトを構築するだけでは不十分で、海外SEOの知識を理解し戦略的に活用することが、海外市場で成功を収めるための鍵となります。
このように、少子高齢化時代の日本において、海外市場へのビジネス展開は企業の生き残りと成長にとって、不可欠な選択となっています。海外SEOを戦略的に活用することで、新たな市場での成功の可能性を高め、将来に向けた安定的な発展を図ることができるのです。
海外SEOのメリット
海外SEOの重要性についてご紹介したところで、海外SEOによってもたらされるメリットについて詳しく解説していきます。
日本にいながら、海外向けのマーケティングを展開できる
通常、海外市場向けのプロモーションやマーケティング戦略を展開する際には、対象国のマーケティング代理店や代行会社を介する必要があります。しかし、SEOに関しては、現地向けのWebサイトやコンテンツを作成することで、日本にいながら海外市場に商品やサービスを訴求することができます。
ただし、単にWebサイトやコンテンツを作成するだけでは不十分です。適切なSEO戦略を活用することで、自社のWebサイトを現地の検索エンジンで上位に表示できる可能性が高まり、現地における認知度を向上させることができます。このように、海外SEOを適切に運用していくことで、海外に出向く必要なく、直接現地のターゲットユーザーに訴求し、新たなビジネスを築いていくことができるのです。
集客の安定化を狙える
日本国内のターゲットユーザーに加えて、海外の検索エンジンでも上位表示を維持することで、より多くのユーザーがWebサイトを訪れ、新規顧客の獲得に貢献することができます。また、海外の検索エンジンからの流入が増加することで、自社の商品やサービスの露出も増え、結果的に売上向上に結びつく可能性も高まります。さらに、検索エンジンからの流入は質が高いと言われています。なぜなら、ユーザーは特定のキーワードで検索を行っており、そのキーワードに関する情報を求めているからです。そのため、検索から訪れたユーザーは商品やサービスに対する関心が高く、購入に至る確率も比較的高いとされています。SEOは長期的な取り組みと継続的な対策が必要ですが、一度上位表示を達成することができれば、効果を発揮し、集客の安定化を狙えることでしょう。
海外SEOのデメリット
海外SEOには多くのメリットがありますが、一方でデメリットも存在します。ここでは、海外SEOのデメリットについて詳しく述べていきます。
運用コストがかかる
海外SEOでは、ターゲット国や地域のニーズに合わせたコンテンツ作成が必要です。そのため、適切な人材が不足している場合、現地のSEOに精通したネイティブスピーカーに依頼する必要があり、費用が膨らむケースがあります。言語においては、機械翻訳を利用することでコストを削減することができますが、適切なキーワードの選定や配置、そして現地のターゲット消費者に受け入れやすいコンテンツにするためにも、SEOの専門知識を持つネイティブ人材への依頼をお勧めします。
また国内向けのサイトと合わせて多言語サイトを構築する場合、管理する必要があるサイト数が増えるため、サイトの更新、新たなコンテンツの翻訳、サーバーのメンテナンス、SEOの最適化など、運用に関わるさまざまな業務へのコストも増加します。無駄な労力とコストを抑えるためにも、各国の市場での重要性や競争状況に応じて、Webサイトを展開する国や地域の優先順位を付けることをお勧めします。
必ずしも成果が出るわけではない
海外SEOにおけるコンテンツ作成や運用において、多大な人員と時間的コストを費やしたにも関わらず、検索エンジンで上位に表示されない可能性もゼロではありません。この主な背景には、検索エンジンのアルゴリズムの複雑性が関連しています。検索エンジン上の表示順位はこれらのアルゴリズムによって評価されるため、アルゴリズムの変更が頻繁に行われ、従来のSEO戦略が突然効果を発揮しなくなる可能性があります。また検索結果が検索エンジンによって再評価されることで、ランキングの変動にも影響が及ぶ恐れがあります。さらに、適切な分析に基づいて作成されたコンテンツであったとしても、季節性や市場変動の影響など、さまざまな要因により期待した結果が得られないこともあるでしょう。
日本SEOとアメリカSEOの違い
日本SEOとアメリカSEOは異なる環境で展開されるため、そのアプローチにも違いがあります。以下にその主な違いについて詳しく説明します。
言語
言語はSEO戦略の基盤であり、検索エンジンでのランキングに大きな影響を与えます。アメリカSEOでは主に英語が使用されていますが、「アメリカ英語」や「イギリス英語」として知られるように、アメリカでは独自の単語やフレーズがあるため、注意が必要です。例えば、アメリカでは「エレベーター」と表現しますが、イギリスでは「リフト」と表現されます。このように、同じ英語でも国や地域ごとに表現が異なるため、現地のユーザーに対して不自然な印象を与えないためにも、それに合わせたコンテンツ作成を展開することが重要です。
文化・トレンド
日本とアメリカとでは文化やトレンドの違いから、コンテンツの見せ方も大きく変わってきます。例えば、以下は『おにぎり レシピ（onigiri recipe）』と検索をかけた際に上位表示されるコンテンツの違いを示しています。
【日本語での検索結果の場合】
【英語での検索結果の場合】
日本向けのSEOサイトでは、おにぎりのレシピのみが表示されていますが、英語のSEOサイトでは、材料や作り方に加えて、「おにぎりとは何か」についての解説が含まれています。これは、日本人にとってはおにぎりがすでに馴染みのある食べ物である一方で、アメリカでは広く知られていないためです。したがって、「おにぎり レシピ」と検索した際に、「おにぎりとはどのような食べ物か」という基礎知識をコンテンツ内で紹介することにより、ユーザーの検索意図と適合し良質なコンテンツとして評価されやすくなるのです。
また、ページのデザインも日本とアメリカでは異なります。日本のWebサイトは情報量が豊富で、詳細なコンテンツが重要視される一方で、アメリカのWebサイトでは視覚的な要素が強調され、写真が多く使用される傾向があります。
検索エンジン
日本とアメリカの検索エンジンシェアは以下の通りです。
【日本の検索エンジンシェア】
【アメリカの検索エンジンシェア】
statcounterより引用（2023年9月現在）
アメリカ（上）は日本（下）と比べて、Yahoo!の利用率が低く、Googleが9割近くのシェアを占めています。さらに、わずか2%ではありますが、アメリカ発祥の検索エンジンであるDuckDuckGOも4番目にランクインしています。
DuckDuckGoは、個人の検索履歴や個人情報を収集・追跡しないことが主な特徴です。ユーザーのプライバシーを保護するため、個人のデータが第三者に漏洩するリスクが低く、ユーザーの個人情報が安全に保たれます。そのため、特定のユーザーから支持を受けています。また、ユーザーが検索する際にパーソナライズされた広告や検索結果なども表示しないため、中立的で公平な検索結果を提供しています。
現時点ではシェアが低いため、アメリカ向けのSEOを運用する上で重要ではありませんが、アメリカ国内で独自の運営方針を持つ検索エンジンとして、覚えておくと良いでしょう。
アメリカ向けSEOで成功を収める秘訣
アメリカ向けSEOで成功を収める秘訣には「現地のニーズに合ったキーワード選定」「ローカライズされたコンテンツ作成」「ネイティブの人による文章作成」の３つがあります。以下、詳しく解説していきます。
現地のニーズに合ったキーワード選定
言語の違いはもちろんですが、文化やトレンドの違いから、日本人にとって馴染みのあるキーワードでも、アメリカ人にとっては馴染みのない場合があります。そのため、現地のニーズに適したキーワードを選定することが重要です。この際に役立つのが、すでに海外向けのSEOサイトを運用している日本企業の同業他社ではなく、アメリカ現地の同業他社が実際に使用しているキーワードを調査し、リストアップすることです。これらのキーワードを元に、適切なコンテンツを作成することで、現地の消費者に寄り添った価値を提供することができます。
また、アメリカの競合サイトによるキーワード選定を行う際は、専用のツールを使用して調査することが重要です。なぜなら、日本から検索を行った場合とアメリカから検索を行った場合では、検索結果が異なる可能性があるからです。そのため、アメリカの検索結果を把握するには、言語設定や位置情報を現地に変更するなど、検索結果の表示方法を新たに設定する必要があります。キーワード選定の精度を高めるためにも、この点を意識して取り組んでみてください。
ローカライズされたコンテンツ作成
英語でコンテンツを作成する際に一番大切なのは、文章の質です。アメリカ人が読んで、スムーズに理解でき、誤解を招かないコンテンツを提供することが最低限求められます。まず最初に重要なのは分かりやすさです。アメリカは「人種のるつぼ」として知られ、多様な人種や民族、移民が共存しています。そのため、全ての人がネイティブスピーカー並みに英語を理解できるとは限りません。そのため、英語が第二言語となっている人々にも分かりやすく伝えるために、以下のポイントが重要です。
- 箇条書きを使う
- 図、表、イメージを活用する
- シンプルな文法と単語を使う
- 長文よりも短文を使う
このようにアメリカの文化やトレンド、ニーズを理解した上で、コンテンツ作成に挑みましょう。
ネイティブの人による文章作成
アメリカ向けのSEOで上位表示を狙うためには、ネイティブのライターに執筆を依頼するのがおすすめです。その理由は大きく分けて２つあります。
まず一つ目は、かかる工数に対して得られる成果物の質が高くなるからです。例えば、日本語の文章を最初に作成し、それから英語に翻訳する場合、あくまで日本語の表現を英語化した不自然な文章になり、現地のユーザーには意味が通らない恐れがあるためです。
また、翻訳機も年々精度が高まってきてはいますが、現地によって好まれる言い回しや文章表現も異なるため、一概に精度の高い翻訳になるとは言い切れません。現地ユーザーにとって親しみやすく、聞き慣れている表現を記事に埋め込むことで、精度の高い記事に仕上げることができます。
このような理由から、アメリカ向けSEOで成功するためにも、現地のSEOに精通したネイティブの人に文章作成を依頼することが大切なのです。
ハウジング・ジャパンの事例では、これらのポイントを駆使して、ローカライズされた戦略に基づいて抽出されたキーワードを活用してコンテンツを制作した結果、SEOを開始してから3か月以内に、ターゲットとした124のキーワードの中から68のキーワードでランキングを向上させることができました。
その他にも、URLを言語によって変えたり、サイトの読み込み速度を最適化したりするなど、アメリカの検索エンジンで狙ったキーワードを上位に表示させるためには、テクニカルな対策も必要となります。詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
アメリカ向けのSEO運用ならハンブルバニー
本記事では、アメリカでのビジネス展開に向けてSEOを運用する際に参考にしていただきたい情報として、海外SEOのメリットやデメリット、日本向けSEOとアメリカ向けSEOの違い、そして成功の秘訣についてご紹介しました。アメリカ向けSEOは、日本にいながらアメリカのユーザーに訴求することができるため、集客の安定化につながるメリットがありますが、一方で、管理するウェブサイトが増えることで運用コストが上がるなどのデメリットも存在します。
弊社ハンブルバニーでは、アメリカ市場でビジネス展開を検討する企業様向けに、アメリカ向けSEOにおける戦略から運用、分析まで網羅的なサポートを提供しています。もし、アメリカ向けのSEO運用にお悩みでしたら、ぜひ一度ご相談ください。