他の国での自社商品やサービスの展開を考えた時、最初に思い浮かぶのはECサイトでの販売かと思います。
そして、外国人向けに海外ECサイトを準備する、商品やサービスを認知させる方法など様々な疑問も同時に頭によぎるのではないでしょうか。
ECサイトを制作して終わりではなく、ここからが始まりです。
慣れない海外マーケットで認知を広げファンを増やして商品やサービスが売れるようにするには、海外ECサイトに取り巻く現状を把握した上で、マーケティング戦略を実施する必要があります。
本記事では、未経験の方から海外ECマーケティングを検討しているウェブ・ECサイト担当者の方にも役立つように特に大きな注目を集めている「越境EC」について解説します。
また越境ECに欠かせないマーケティングの手法もご紹介します。
それぞれのマーケティングには役割や特徴がありますので、それぞれのポイントを押さえておきましょう。
これから海外ECサイトに取り組むのであれば、申請できる助成金や補助金制度なども挙げていますので是非ご参考になさってください。
目次
海外ECサイトの基礎知識
越境ECとは?
「越境EC」の意味や内容について、分かっているようで分からないという方も多いかもしれません。ここできちんと理解しておきましょう。
一言でいえば、国境を越えて取引を行うことを越境ECと呼びます。
例えば、海外のECサイトで商品を購入して日本に取り寄せる、あるいは日本のECサイトで海外の顧客向けに商品を販売するなどです。
越境ECには、大きく3種類に分類されています。
①言語や決済システムなどを現地のニーズに合わせて作り込む自社越境ECサイト
②AmazonやeBayなどの海外のECモールに出店
③海外への代行販売を行う業者に商品を買い取ってもらう代行販売型越境EC
越境ECの市場規模
経済産業省が発表した、令和3年度デジタル取引環境整備事業の報告書において、日本の物販系分野のEC市場規模(BtoC)は、「2020年の12兆2,333億円から1兆532億円増加し、13兆2,865億円となっている。伸長率は 8.61%であった」
日本でも越境ECの市場規模は今も成長し拡大していくだろうと推定されています。
海外ECのメリット
海外ECにはどのようなメリットがあるのかを3つ紹介します。
海外への販路を広げられる
国内市場だけでなく、世界各国で新たなマーケットシェアを獲得できる可能性があります。
自社の商品やサービスが人気を得る特定の地域や魅力的なマーケットが世界のどこかにあるかもしれません。
例えば、近年経済発展が著しく可処分所得が増えている東南アジア、中東諸国など、世界中に顧客を獲得する販路が広がります。
実店舗より簡単に出店できる
海外進出し実店舗を持つとなると、現地での店舗や従業員など様々な経費がかさみますが、現地に訪れなくてもインターネット上で比較的低コストで出店できます。
日本製品に魅力を感じる顧客がいる
メイドインジャパンはもちろん海外でも知れ渡っています。
細やかな縫製、国内外で人気のアニメグッズやゲーム、また伝統工芸などの日本ならではの商品など、購買意欲の高い顧客を獲得できる可能性があります。
海外ECのデメリット
一方、海外ECには以下のようなデメリットもあります。
販売する国の規制に対応する必要がある
サイト画面を現地の言葉に翻訳したり、商品やサービスを販売する国や地域の法律や規制を把握する必要があります。
ECサイトの決済方法も検討し、個人情報の取り扱いなどにも気をつけましょう。
輸送コストが高額
日本から海外に向けて発送することが越境ECの場合は多く、国内への配送よりもはるかに輸送コストが高額になります。
輸送コスト以外に、トータルの配達時間がかかること、また海外では紛失などのリスクもあるので輸送に関わるリスク管理も重要と言えるでしょう。
国際海上輸送のコンテナ不足や、石油の高騰化など様々な影響を受け、輸送コストが上昇していることは無視できません。
2020年と2021年を比べると約8倍ほど高騰化していることが分かります(日本発主要航路の国際コンテナ輸送価格)。
越境ECサイトに欠かせないマーケティング
海外ECサイトを始める際に欠かせない3つのマーケティングをご紹介します。
ユーザーと共感を生み購買意欲を掻き立てるSNSマーケティング
最近の消費者は、SNSで発信・拡散される情報を閲覧し商品について認知し興味を持つことが多くなりました。
Instagramer、YouTuber、TikTokerのようなSNS上で影響力があるインフルエンサーの投稿や親しい友人などの投稿を見て購入を決定することさえあります。
越境ECでは、SNSを活用した商品やサービスの海外向けプロモーションが有効です。
SNSは無料で利用できますし低コストでプロモーションできまた海外ユーザーへのアプローチもできます。
さらに詳しくは、「海外進出に欠かせないSNSマーケティングを成功させるポイントとは」で解説しています。
購買意欲を掻き立てるインフルエンサーを起用したプロモーションやブランドメッセージや世界観をSNSで発信することで共感を生みます。
ブランド理解の促進とユーザーの課題を解決するSEO対策
越境ECでは、多言語対応が可能なWebサイトの構築をする必要があるだけでなく、Webサイトでの多言語SEO対策も重要となります。
例えば、Googleでは基本的にその越境ECサイトがどの言語を使用しどの地域のユーザー向けであるかなど複数の基準で判別しています。
具体的な方法としては、GoogleサーチコンソールでWebサイトを表示する国を選択する、海外ユーザーの文化や習慣、法律などに合わせてコンテンツを作成します。
ユーザー自身がどのような課題や悩みを持ち、その解決策を提供できているかという点で自社ECサイトのコンテンツ内容をチェックしましょう。
ユーザーの課題解決ができる商品やサービスと認識してもらうことができれば、ブランド理解を促進し、ユーザーの心を掴める可能性があります。
認知を広げて新規ユーザーや見込み客を取り込む広告運用
越境ECサイトへのトラフィックを向上させる、商品やサービスをWeb上で認知させる、新規顧客の集客や見込み客の獲得といった目的においてWeb広告を活用で達成できます。
Google広告の一つでGoogleショッピング広告があります。
ユーザーが検索エンジンを利用したときに表示されるGoogleショッピングに商品情報を掲載できます。
より購買意欲の高い見込み客が閲覧するため、有効な広告戦略の一つです。
また、Facebook広告のようなSNS広告では、写真や動画などのビジュアルを活かし商品やサービスを海外ユーザーに見てもらえる機会が増加します。
自社の越境ECで販売している商品やサービスに適した広告戦略を検討し、実施方法を決定しましょう。越境ECに使用できる広告や運用のコツはこちらをご覧ください。
Shopifyを活用した越境ECの事例
Shopifyをご存知ですか?
今や、ECサイト自体をコーディングせず海外ユーザー向けにもカスタマイズできるような画期的なサービスがあります。
ノーコードでECサイトを構築できるプラットフォームの一つがShopify。
通常Webサイトを作成するとなると、ドメイン取得、サーバー契約、デザイン、開発など様々な工程が存在します。
さらにECサイトは決済を扱うためセキュリティ対策は厳重にする必要があります。
しかし、Shopifyでは、月額費用を支払うことで初めてのECサイトでも比較的容易に開始することができます。
詳しくは、越境ECのはじめ方:Shopifyを海外販売用ストアにもおすすめする理由をご覧ください。
Shopifyを活用した事例として、京都発で海外ユーザーに向けて弁当箱を販売する越境ECサイトBENTO&COがあります。
外国人の嗜好に合わせた弁当箱やそれを包む風呂敷も販売されています。
私たち日本人で馴染みのある日用品、調理器具なども含め日本市場では当たり前と考えられる商品が、視点を変えればとても魅力的になり得るのです。
日本文化を越境ECで表現することの付加価値と深みこそが越境ECの真髄なのかもしれません。
はじめての海外ECサイトに活用できる助成金や補助金制度
IT導入補助金
越境ECサイトを制作する際に、IT導入補助金を活用すれば、経費の一部に対し補助が受けられる可能性があるので申請することをおすすめします。
しかしこの補助金制度はITツールを導入することによってどのように業務効率化されるのか、売上向上をサポートできるのかを目的としているため、詳しくは、IT導入補助金の公式ホームページを確認するようにしましょう。
その他の補助金
ほかにも越境ECサイトを開始するのに申請できる補助金制度が存在しています。
例えば、ものづくり補助金は、生産性向上を目的とした事業を計画しており、それが越境ECサイトと相関性があれば、補助金上限額は最大1,000万円が交付されます。
また、小規模事業者持続化補助金という制度もあります。
こちらは、小規模事業者が顧客を増やす目的であり、越境ECを立ち上げたい、新たに海外ユーザーの新規顧客や見込み客を集客したいとなれば、小規模事業者持続化補助金が交付される可能性もあるので、中小機構の公式ホームページも合わせて確認してみましょう。